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日本の再生可能エネルギー復活の鍵、次世代太陽電池とは?

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2021年10月26日にあった菅総理の所信表明演説、皆さん、聞かれたり読まれたりしましたか?


私は、所信表明演説のなかで「グリーン社会の実現」というパートに注目し、特に「次世代型太陽電池」という単語には心が高ぶりました。なぜなら、私が研究者になった理由は、「地球環境を守りたい」という思いのためです。その思いを実現するために、太陽電池技術者になり、再生可能エネルギーの普及に微力ながら貢献できたと思います。

 

そんなこんなの流れがあって、ここはぜひ太陽電池について、もっと皆さんに知ってほしいと思い、所信表明演説にあった次世代太陽電池に関する記事を書いてみました。ぜひご一読ください。

太陽電池の日本メーカーの現状

私が太陽電池の技術者として活動し始めていた時期である2006年頃、シャープが世界シェア1位で、日本企業が上位5社中4社を占める勢いでした。しかし、2007年に欧州企業のQ-cellに世界1位の座を奪われ、その後、中国企業のすさまじい増産の結果、現在では、日本企業は残念ながら、世界シェアではTop10にも入っていません。

 

一方で、国内シェアに目を向けてみましょう。
こちらは、意外にもパナソニック、京セラ、シャープなどの国内企業が上位におり、シェアも4~5割程度を占めています。携帯などでも見られた、相変わらずの内弁慶、よく見たガラパゴス状態ですね。

 

しかし、注意すべきことがあります。日本企業の出荷分の約8~9割は、海外生産なのです。日本は人件費が高いから、海外で作るとか昔は言われましたが、現状は、中国も人件費は高騰し、そこまで日本と差がないのではというレベルです。そんな中でも国内でモノ作りすると、勝てないという状況は、個人的には悲しい気持ちでもあり、中国への敗北感さえ感じます。

 

 

なぜ太陽電池分野で日本メーカーが負けているのか

この問いに対する答えがなければ、たとえ今回、提案された次世代型太陽電池といえど、かつての半導体しかり、液晶テレビしかり、また負け戦になるでしょう。

この問いに対しては、様々な回答が用意されてきました。

  • 2005年で補助金を打ち切ったため、国内市場が冷え込んだ
  • 2010年代初頭に太陽電池の原料となるシリコンの確保に失敗
  • そもそも日本企業の太陽電池はコスト高い
  • 中国企業が採算度外視で、安売り競争を仕掛けてきた

などです。


いずれも答えとしては、外部環境を指摘しています。しかし、私は、内部環境に原因があり、日本企業は、戦略で負けたのだと私は考えています。

シリコン確保失敗?戦争するうえで、兵站確保は当たり前なのに。

補助金打ち切り?補助金はあくまで、導入してもらうきっかけなんだから、無くなる前提で動かないと。困るなら、オールジャパンとして存続する手段を用意すべきだった。

いずれも、将来の見通しの甘さからきている部分もあったと、今となっては強く感じます。

 

一方で、太陽電池業界で、成功した企業もあります。それは製造装置メーカーです。ある意味、このメーカーが中国メーカーを強くした面もありますが。結局は、日本は大量生産品を作ることよりも、顧客の要望に合わせるカスタマイズ品(多品種少量生産)が得意ということかもしれません。

 

所信表明であった「次世代型太陽電池」とは?

ここで、菅総理が述べた「次世代型太陽電池」とは、一体、何を指すのでしょうか?おそらく、横浜桐蔭横浜大学 宮坂教授が生み出した「ペロブスカイト型太陽電池」を指すものと思われます。

 

ペロブスカイト型太陽電池とはどんなものでしょうか。簡単に説明すると、

  • 有機-無機ハイブリット太陽電池
  • 従来のシリコン型太陽電池よりも圧倒的に薄くできる
  • 理論上はシリコン型太陽電池よりも高効率にできる

といったところです。

 

これらの特徴のうち、特に注目を浴びているのは、「薄くできる」点です。これにより、従来の太陽電池とは異なり、フィルム状にできます。フィルム上にすることで、今まで設置できなかった曲面部分、例えば、電気自動車のボディに使える可能性があることす。また、効率が高くなることで、日本の狭い屋根に乗せるためには大きなメリットでしょう。

 

次世代太陽電池の日本企業の取り組み

では、フィルム状のペロブスカイト型太陽電池は、日本企業の取組はどうでしょうか。現状、東芝や積水化学が開発に着手しており、実用化を目指している状況です。発電量に関わる変換効率は、シリコン型の20%越えと比較すると、12%程度とまだまだですが、今後の開発に期待したいところです。

参照:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

www.nedo.go.jp

 

ペロブスカイト型は屋内用途で展開すべき

管総理の演説では、原子力発電や石炭発電に置き換わりとなる電源として、再生可能エネルギーが期待されています。しかし、私としては、ペロブスカイト型太陽電池の活用先としては、電卓の太陽電池に使っているものと同じく、まずは屋内向けを提案します。屋内向けで、ある程度、生産技術を確立してから、通常の太陽電池用途へ展開していくべきです。

 

では、屋内向けにすることで、ペロブスカイト太陽電池に活路はあるのでしょうか?答えは、5G通信にあります。iPhone12の発売でも、注目を浴びている5G通信が本格化すると、様々なところにセンサが設置され、そのセンサからの得られる情報でさまざまなサービスが本格化すると言われています。

 

しかし、課題があり、センサを動かす電力をどう供給するかです。5Gが本格普及すると、約1兆個に上るセンサが動き、これを配線で電気を供給することはナンセンスのため、自立型で動かすことが必要になります。この電源として、フィルム形状の太陽電池が注目されています。フィルム型のため、曲面上にも設置でき、落下しても安全なので、ぴったりです。

 

この辺りに目をつけているのは、京都大学 若宮教授です。下記のニュースリリースでもあるとおり、目をつけており、さらに自身で大学ベンチャー(株式会社エネコートテクノロジーズ)を立ち上げている方です。今後も、注目してみていきたいと思います。

参考:国立大学法人 京都大学(若宮教授)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/191015_3.html

 

※もっとペロブスカイト型太陽電池を詳しく知りたい方は、googleなどで検索してみてください。

 

次世代型太陽電池で日本企業の巻き返しはあるか

まったくないとは言えませんが、可能性は低いと私は思います。なぜなら、ゲームチェンジャーになるほどのインパクトはないと思うからです

 

というのも、ペロブスカイト太陽電池でこの技術で日本が優位に立ったとしても、太陽光を受けて発電するという機能は同じで、ちょっと性能が良くて、曲がるくらいなので、素人からすれば、何が違うのよ、どっちでもいいやとなる気がします。正直、圧倒的な変化に感じれないですよね。

 

ただ、私の感想が間違っていて、ここで勝つことで、日本のモノ作りが再度、活況を取り戻すことができることを望んでいます。長くなってきたので、次回も同じテーマでお話しさせてもらいます。

 

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