管理職への昇進試験を初めて受ける多くの人が困るのは、人材アセスメント試験ですよね。私も人材アセスメント試験があると聞いて、それって何する試験なのって思いました。
改めていうことでもありませんが、昇進試験に合格するためには、この人材アセスメント試験の試験対策を行い、準備万端にしなければなりません。しかし、どのような試験なのかわからなければ、試験対策を行うことはできませんので、孫子の兵法書にもあるとおり、まずは敵を知る必要があります。
ここでは、人材アセスメント試験がどんな試験のかわからない人のために試験の概要や評価項目、試験の実施内容に関して、解説していますので、最後までご覧ください。
- 昇進試験(昇格試験)の仕組み
- 人材アセスメント試験とは
- 人材アセスメント試験の評価項目
- 人材アセスメント試験の採点基準
- 評価項目や採点基準をもっと知りたい人は
- 人材アセスメント試験で行われる試験科目の紹介
- まとめ
昇進試験(昇格試験)の仕組み
人材アセスメント試験がなんぞやと説明する前に、昇進・昇格試験の一般的なスキームを以下に紹介します。
この図のように、管理職への昇進試験あるいは及び部長などの上の役職への昇格試験は、①候補者絞り込み、②一次試験、③二次試験の3つのステップで行われることが多いでしょう。なお、人材アセスメント試験は、一次試験で行われることが多いです。
まず、第一段階として、社内で昇進昇格しても良いと思われる人材を上司からの推薦や直近の人事評価で絞り込みして、試験を受験できる候補者を絞り込みます。そして、試験は、一次試験と二次試験の二つに分けて行われることが多いです。
また、一次試験の段階で合否を決めて、二次試験に進める人を選別する会社もあれば、一次試験と二次試験のそれぞれで合否は出さず、二つの試験を合算して合否を出す会社もあります。このあたりは、自分が勤めている会社の仕組みを良く確認しましょう。
★昇進試験の流れを紹介した記事
torotoroupaupa.hatenablog.com
人材アセスメント試験とは
まず、アセスメントが何かわからない方がおられるとおもいますが、アセスメントは評価や査定を意味しています。つまり、人材アセスメント試験は、個人の能力を評価・査定する試験ということです。
さらに具体的にいえば、人材アセスメント試験は、会社などの組織に組み込まれたときにどんな人物像でどのような適性をもっているのかを第三者が観察し、個人の得意な能力や不得意な能力を客観的に判定するために実施します。
みなさんが所属している会社によって重みづけは変わってくるのですが、人材アセスメント試験は、各個人のマネージメント能力を見ることに適しているため、特に管理職への昇進試験のときに重宝されるケースが多いです。
なお、会社によっては、管理職への昇進試験や昇格試験だけでなく、人事異動や採用、人材教育に活かすためにも使用されることもあります。
人材アセスメント試験はほかの呼び方もあり
実は人材アセスメント試験は、呼び方は試験を運営する会社でさまざまです。人材アセスメントの他には、人事アセスメントとか適性検査、単にアセスメントなどとも呼ばれたりします。
もし管理職試験で行われる試験で人材アセスメント試験が項目としてなかったとしても、すべての試験科目に関して、どのような試験なのかは上司や受験をしたことのある同僚などに必ずヒヤリングしておきましょう。
昇進試験で人材アセスメント試験を用いる目的
では、管理職への昇進試験で、なぜ人材アセスメント試験を行うのでしょうか。答えは、受験者の能力や人間性が「昇進昇格する職務に適しているのか」を見極めるのに優れた評価方法だからです。あとで詳しく説明しますが、人材アセスメント試験は管理職が行う日々の業務に基づいたロールプレイングを行うため、管理職で必要となる能力を持っているかを判断しやすい試験です。
なお、ここでの能力は、まだ発揮されていない潜在的な能力ではなく、すでに目に見えている(顕在化している)能力を評価します。
つまり、次の3人を例に挙げて説明しましょう。
- Aさん:能力100 =>顕在的能力40、潜在的能力60
- Bさん:能力70 =>顕在的能力30、潜在的能力40
- Cさん:能力50 =>顕在的能力50、潜在的能力0
このとき、人材アセスメント試験で判定された評価結果は、第一位:Cさん、第二位:Aさん、第三位:Bさんとなります。見てのとおり、Aさんが伸びしろが大きいのですが、人材アセスメント試験では発揮されていない能力は見えないので、評価されないと言うことになります。
ここまでのイメージで書くと次のような感じです。
いくら大きな氷の塊だったとしても海面に出ていなければ海の上からは海中は見えないので、海の上から大きさを評価することができません。つまり、人材アセスメント試験でも同様で、海中に浮かんでいる氷の塊のうち、海面に見えている部分のみを見ているイメージと同じく、顕在化している部分の才能しか他人には評価することはできません。
人材アセスメント試験の評価項目
人材アセスメント試験の評価項目は、皆さんが所属する会社がどんな能力を重視したいのかで変わってくるのですが、大まかに分けて次の4つに分類されます。
- 個人特性
- 意思決定能力
- 対人関係能力
- 業務遂行能力
ここで示した4つの評価項目は、それぞれが組織で仕事をする上で必要の能力であり、特に管理職・マネージャーにとっては、得手不得手はあるでしょうが、最低限は見つけておくべき能力です。
それでは、この4つの評価項目について、どのようなものか説明していきましょう。
個人特性
個人特性では、率先して行動する自発性や能動的に取り組む積極性、周囲のストレスに負けずに課題に取り組むストレス耐性などを評価します。
意思決定能力
意思決定能力とは、情報収集能力や課題発見能力、問題の分析能力、判断力などを評価します。
対人関係能力
対人関係能力とは、集団を達成すべき目標に導くリーダーシップや他人の意見を受け入れることができる柔軟性、自身の考えを伝えるコミュニケーション力などを評価します。
業務遂行能力
業務遂行能力では、組織の方針立案やビジョンを作ることができるかや自分が所属する組織の活動を作る計画が設計できるか、あるいは組織が持つ経営資源を効果的に利用することができるかなどを評価します。
人材アセスメント試験の採点基準
人材アセスメント試験の採点は、先ほど説明した評価項目に関して、試験官(アセッサー)が客観的に見て点数付けを行います。採点される対象は、ここは本当に重要なポイントですが、試験中に行った行動やしぐさ、話し方、発言、態度、紙に書いたものなど自らが発して、相手に届いたこととなります。
つまり、心の中で思ったことや試験時間以外(実際の勤務時間とか)では、採点されません。試験中は、行動をいかに相手に見てもらうかが大事なので、良く心がけましょう。
なお、採点基準を知りたい方も多い方と思います。しかし、こういう行動が評価されるということは試験時に開示してくれるのですが、具体的な採点基準までは運営会社のノウハウになっていることもあり、解説されることはありません。そもそも、所属する会社によって、評価項目に対する重みづけが異なることから、自身の試験対策に役立てることは難しいでしょう。
評価項目や採点基準をもっと知りたい人は
人材アセスメント試験の評価項目や採点基準をざっと説明しましたが、あくまで概要であり、これは私が知っている知識のほんの一部です。もっと詳しく知りたいという方は次の本がおすすめです。
この本は、さきほど大きく4つに分類して紹介した評価項目をさらに細分化して記載されています。加えて、細分化した項目ごとにどのような行動や言動が評価対象となるのかの事例(採点基準)や何をすればその能力を上げる訓練になるのかまで示してくれています。昇進試験を完全攻略するつもりで対策する方にはぜひ読んでほしいおすすめの本です。
人材アセスメント試験で行われる試験科目の紹介
人材アセスメント試験で行われる試験科目は、実施する会社によって異なりますが、次の4つとなるケースが多いです。なお、すべてロールプレイングです。
- グループディスカッション(グループ討議)
- 面接演習(面談演習)
- インバスケット演習
- 分析演習(方針立案)
実はいずれの科目も管理職になれば、仕事で頻繁に行うことです。それぞれについて、簡単に解説していきましょう。
グループディスカッション
グループディスカッションは、グループ討議とも呼ばれることもあります。この試験は、新卒時の就活で受けたことがある方も多いのではないでしょうか。ただし、管理職への昇進試験や部長などに昇格する時に行う試験で実施するグループディスカッションは少し実施方法が違うので、注意いたしましょう。
まず、就活と同じく、人材アセスメント試験でおこなうグループディスカッションでは、集団になったとき、どのような対人行動をとるかを見られます。試験の形式は、次のとおりです。
- 討議メンバー:受験者のみの4~8名
- 討議の題目:試験官より与えられる。
- 時間:1時間程度
- 役割分担:リーダーなどの役割設定はしてはいけないことが多い
昇進試験のグループディスカッションは、役割設定がされないことが就活と異なる点でしょう。また、採点基準も新入社員と管理職で必要とされる能力は違うので、当然変わってきます。
さらに、グループディスカッションの様子は、試験官が採点のために見ていることは当たり前ですが、下記のようにビデオ撮影されています。この点も就活とは異なる点ですね。
グループディスカッションに関して、どのような試験なのか、どのような試験対策が必要になるのか、詳しく知りたい方は以下の記事で解説していますので、参照してください。
★グループディスカッションの概要と試験対策を解説した記事
面接演習
1対1で、面接を行う演習です。一般に相手が試験官(アセッサー)になります。面談演習とも呼ばれます。面接演習では、面談において、対個人でどのような行動をとるかを観察、評価します。
面接演習は、ロールプレイング形式で行われます。例えば、次のようなイメージです
- 状況:自身が上司で、相手は部下という設定
- 面談の目的:部下の勤務態度が悪いことを指導する
- 面談時間:10分
イメージは次の通りです。なお、試験官がのちほど、評価に用いるためにビデオ撮影がされています。
面接演習(面談演習)に関して、どのような試験なのか、試験対策として何をすればいいのか、詳しく知りたい方は以下の記事で解説していますので、参照してください
★面接演習(面談演習)の概要と対策を解説した記事
インバスケット演習
インバスケット演習は、与えられた数多くの課題を短い制限時間で処理していくロールプレイングです。日々の業務に照らすと、面倒な案件がメールで来ており、それに対して、なんらかの回答を送信していくイメージです。
基本、ロールプレイングということなので、自身に役割が課されるのですが、部下がいる管理職(マネージャー)役になります。また、課される役割は、試験に合格した後で自身が担うことになる役職に合ったものが用意されます。
一般的に、制限時間内で個人が処理できる量よりも多い案件数があるため、いかに優先順位付けを上手くするが一つのポイントです。また、それぞれの案件での本質的な課題を見抜く力や不足している情報を収集する能力が必要になります。
試験の回答は、紙に書くケースとインターネットで回答するケースがあり、インターネットでは、マークシートのような選択式のときもあります。
なお、インバスケット試験に関して、どのような試験なのか、どうやれば対策になるのか、詳しく知りたい方は以下の記事で解説していますので、参照してください。
★インバスケット試験の概要と対策を解説した記事
分析演習
分析演習は方針立案とも呼ばれます。分析演習では、課題により設定された役割に従て、与えられた資料から課題などを分析して今後の方針を立案し、自身で模造紙などにまとめてプレゼン発表を行う試験です。
なお、与えられる課題は営業のように顧客へ売り込むものではなく、自部署の部長や課長が部下に対して方針を説明している形態になります。この形態となっているのは、昇進昇格試験で行うプレゼン演習は、営業スキルを見るのではなく、組織の管理職(マネージャー)としての職務に適しているかを評価するためだからです。
まとめ
ここまでの内容をまとめると、
- 人材アセスメント試験は、昇進試験で一次試験で実施されることが多い
- 特に管理職への昇進試験では重宝される
- 人材アセスメント試験は、受験者のすでに発揮されている能力を評価し、昇進昇格する職務に適しているかを見極めるために使用する
- 評価項目は、大きく分けて「個人特性・意思決定能力・対人関係能力・業務遂行能力」の4つに分類される
- 評価項目や採点基準は、皆さんが所属する会社がどの能力を重視するかで変わる。
- 試験科目は、「グループディスカッション・面接演習・インバスケット演習・分析演習」の4つ
です。
以上のように、この記事では、人材アセスメント試験が何かと理解してもらうために解説してきました。人材アセスメント試験に打ち勝つためには、敵を知るだけでなく、己を知り、試験対策をしっかり行う必要がありますので、早めに準備を始めるとよいでしょう。試験対策については、記事内にリンクを貼ってますが、科目ごとに解説していますので、そちらを参考にしてください。