管理職の昇進・昇格試験では、人材アセスメント試験が設定されていることが多く、大体のケースで以下の4つの科目で構成されています。
- インバスケット試験
- グループディスカッション(グループ討議)
- 面接演習(面談演習)
- 分析演習(方針立案)
いずれの科目も学校のテストとは異なったものなので、いざどうやって対策すればいいのか悩んでしまいますよね。特に今まではプレイヤーとして活躍していて部下がいない方にとっては、経験が少ない面接演習に苦手意識を持ちやすいのではないでしょうか。
そんな方のためにこの記事では、面接演習がどのようなものなのか、どのように攻略すればいいのかを解説していきますので、最後までご覧ください。
なお、そもそも昇進試験や人材アセスメント試験がどのようなものなのか、分からない方は、この記事の理解を深めるためにも、以下を先に読んで欲しいです。
人材アセスメント試験で行われる面接演習とは
ここでは、人材アセスメント試験で実施される面談演習がどのような試験内容かを解説していきます。
行う面接演習の形式
まず、面接演習で何をするのかですが、受験生と試験官の二人で面接を行い、面接の中で受験生がどのように行動するかを観察して採点していきます。面接は、ロールプレイング形式となっており、管理職の昇進試験では受験生が上司役で、試験官が部下役で設定されるケースが多いです。他のケースとしては、受験生が営業担当で、試験官が得意先(売り込み先)という場合もあります。
面接演習に要する時間は、全部あわせて25~35分程度です。また、あとで試験官が評価するために面接演習は以下の絵で示すとおり、たいてい面接中はビデオ撮影がされています。
なお、会社によっては、人材アセスメント試験が終了したあと、一緒に受験した人たちとともに面接演習で撮影したビデオを見て、反省する場を設けることがあります。(ようは、試験官以外の人に自らの面接演習の様子を見られてしまいます。)もし面接演習がうまくできなかった場合、かなり恥ずかしい思いをするかもしれません。
面接演習の流れ
面接演習は、準備パートと面談パートの2つのパートで成り立っています。
準備パートでは、最初に、試験官から面談相手の情報(性格や最近の状況、周囲の噂など)や会社の状況といったデータや面談で達成すべき目的が書かれた資料を渡されます。受験生はその資料を読んで状況を把握し、資料から得た情報を使ってどのように面談相手と話をするかを考えます。準備パートに与えられた時間は、受ける試験によって異なりますが、10分程度です。
準備パートが終わると、試験官がいる部屋に移動して、面談パートがスタートします。面談パートの時間はだいたい10分前後です。なお、面接演習において、制限時間が過ぎると発言中だったとしてもそこで終了です。
なお、人材アセスメントを実施している会社によっては、インバスケット試験を受けている最中に面接試験を実施する場合があります。このケースでは、イメージでいえば、自分の業務に集中しているときに他の緊急の業務が入ってきた感じになるため、集中力がそがれやすい状態です。
実際、私が人材アセスメント試験を受けたときもこの形式でした。まず、インバスケット試験の途中で面接演習が入った際に面接演習を受ける心構えをしにくいです。また、面接演習が終わると、席に戻ってインバスケット試験に再度、臨むことになるのですが、面接演習のことが気になってすぐには取り掛かれませんでした。特に面談演習がうまくいかなかった場合は、落胆してしまい、しばらくインバスケット試験に気持ちが向かない人もいます。
面接演習の評価項目・評価基準
昇進試験で実施される面談演習での評価は、人材アセスメント試験での評価基準、評価項目に沿って行われます。この評価基準・科目は、自身が所属している会社にあわせて作成されることからそれぞれで特性が異なっているのですが、基本的に以下の4つに分けられます。
- 個人特性
- 意思決定能力
- 対人関係能力
- 業務遂行能力
1つ目の個人特性は、面談時に相手に対して、積極的に会話を持ちかける「積極性」や相手から厳しい意見や反論が合っても、動揺したりイライラしたりしない「ストレス耐性」、相手の意見ではなく、自身の意見を貫き通す「自主独立性」などです。
2つめの意思決定能力とは、準備パートで渡された課題演習シートを読み取ったり、相手の会話や仕草などから情報を集めたりする情報収集能力や面談内でのやりとりからどこに問題があるのか見つけて分析する課題発見能力、分析能力、面談で得た情報などから今後の方針を決断する判断力などを評価します。
3つめの対人関係能力とは、面談時に相手の主張を受け止める感受性や相手の意見や提案を素直に受け入れる柔軟性、面談の相手に考えを伝えるコミュニケーション力などを評価します。
4つ目の業務遂行能力では、面談で発見した問題をどのように解決していくかの計画を立てられるかや課題を解決するために効果的に人・モノ・金を利用する提案ができるかなどが評価基準です。
なお、評価基準及び評価項目がどんなものかは、多くの場合、人材アセスメント試験が始まる前に試験官より説明してもらえるはずです。もし昇進試験で少しでも優位にしたいというのであれば、自身が所属する会社で昇進試験を受験したことのある同僚に評価基準や評価内容がどのようなものかをあらかじめ聞いておくと対策が立てやすくなるでしょう。
面接演習で心がける5つのポイント
ここまで、人材アセスメント試験で行う面接演習がどのような試験内容なのかを解説してきました。となると、この記事を読んでいる方が気になるのは、どうすれば面接演習でいい評価をもらえるのかですよね。
いい評価をもらいたいためには、面接演習は以下の5つのことを心かげておけば、ぐっと楽になります。
- 相手の話をよく聞く
- 無理に説得しない
- 相手に協力を求める
- 演習課題が書かれた紙の内容を鵜呑みにしない
- 一回の面談で解決しようとしない
なお、ここでは昇進試験で行う面接演習での注意点として書いていますが、日常生活の会話や仕事で行う面談でも当てはまりますので、しっかり学びましょう。
相手の話をよく聞く
最初に示す面接演習で心がけるべきポイントは、相手の話をよく聞くことです。面接演習では、これが一番大事なポイントです。イメージでいうと、話す分量を自分が3、相手が7の割合となるようにしましょう。
では、なぜ相手の話を聞く必要があるかですが、面談は相手からの情報収集の場でもあるからです。もう少し詳しく解説していきましょう、どんな物事も一面だけを見ても全体像はわかりませんし、全体像が分からない状態だと情報が不足している可能性があるために判断を間違ってしまうリスクが高くなります。この面接演習でいえば、課題シートに書かれている情報のみで判断すると、間違うリスクが大きく、別の面を構成している相手からも情報を入手しなければなりません。
無理に説得しようとしない
二つ目に面接演習で心がけるべきポイントとして挙げられるのは、無理に説得しようとしないことです。
最初に思い出してほしいのですが、面接演習では、「部下に転勤することを認めてもらうこと」というふうに、相手に要求を飲んでもらうことが課題として必ず設定されています。相手に要求を呑んでもらうということは、一見、相手に自身の考えや思いを伝えて説得する必要があるように見えます。
実は、この考えがこの試験の一つの障害として設定されているのです。1つ目の心がけるべきポイントとかぶる部分があるのですが、無理に相手に要求をのますために説得しようとすると、たいていの人は自身の考えを伝えるために話し続けることになってしまい、一方通行の面談となってしまいます。
また、相手の話を聞いていないということは、説得する材料は相手の事情を考慮せずに自分が持っている情報だけとなるので、相手からすれば自分の事情を考慮してくれない、一方的な要求と感じるでしょう。その結果、相手に不満に生じ、要求自体も相手が受け入れ可能ではないので、どうやっても説得できません。
なので、一つ目のポイントで示した通り、相手の話をしっかり聞いてあげて自身が持つ情報を組み合わせて、相手も自分も納得できるWin-Winとなる案を一緒に作り上げていく話し合いを目指しましょう。
相手に協力を求める
三つ目の面接演習で心がけるべきポイントは、面接演習で指示された課題を解決するために相手に協力を求めることです。試験なので、どうしても自身の力のみで解決しないといけないと思ってしまいますが、問題解決を行うために一人で考えるよりも二人で考えた方がよりいい解決策を見つけやすいことは自明です。
また、面談で解決しなければならない課題に関しては面談相手が一番の当事者なので、情報を多く持っているため、その情報や考えを聞くことにより良い提案が作りやすくなります。究極を言えば、会社などから指示された要望を満足した解決策を相手に考えだしてもらえることがベストです。
演習課題が書かれた紙の内容を鵜呑みにしない
さきほど、相手の話を聞くべきと解説したとくにも説明しているので、繰り返しになりますが、より詳しく説明します。
面接演習では、準備パートで渡される演習課題シート内に周囲の人の噂話が書かれているケースがあります。この噂話ですが、根拠もしっかりしているように見えるので、信じたくなる気持ちも分かりますが、それはやめましょう。
というのも、噂話はあくまでその人の行動や言動を他人の目から見た情報なので、面談相手のみが知っている情報が含まれていません。特に悪い噂話に関しては、噂話を流した人が妬みや誤解から正確な情報出ない可能性もあるので、鵜呑みにせずに面談相手から情報を引き出してからその噂話が有効な情報かどうか判断するようにしましょう。
一回の面談で解決しようとしない
最後に示す心がけるべきポイントは、一回の面談で解決しようしないです。人材アセスメント試験で行う面接演習もようは試験なので、どうしても提示された課題を解決まで持って行こうとする意識は立派です。しかし、その意識にとらわれすぎてはいけません。
というも、日常生活やビジネスの現場での面談を思い浮かべてもらえばわかると思うのですが、面談で話す内容が重いものであれば、短時間の話し合いで解決するケースはほとんどないでしょう。面接演習で出される課題は、そういう重い内容を設定されているので、わずか10分で解決まで持って行くことはかなり難しいです。
ですから、面接演習ではチャンスがあれば課題を解決できるところまで持って行きたいくらいの気持ちで臨みましょう。そして、一回の打ち合わせで何とかしようとするのではなく、解決するための糸口をつかんで次の打ち合わせにつなげようと考えるとずいぶんやりやすくなります。相手の話をよく聞いて情報収集することこの面談の目的と割り切ってもいいですよ。(もちろん、それだけでは問題ですが、一回で終わらせようとするよりはましです。)
まとめ
ここまで、人材アセスメント試験で実施される面接演習がどのようなものなのかを解説してきました。
面接演習では、自分が話すのではなく、相手に話してもらうことを心掛けるようにしましょう。また、面談の目的は相手に要求を呑んでもらうことなのですが、無理に説得するのではなく、相手から協力を引き出すようにするとうまくいきやすいです。また、面談一回で解決できるような話ではないので、面談演習では相手から情報をもらい、解決の糸口を見つけ出すくらいの気持ちで臨むようにしましょう。