管理職への昇進試験では、人材アセスメントが実施されるケースが多いです。企業によって、人材アセスメントのために実施される科目はさまざまですが、分析発表演習あるいは方針立案演習という科目が設定されていることがあります。
この分発表演習・方針立案演習は、一昔前にはあまり実施されていなかったのですが、近年はプレゼン力や実施計画の策定力を見るために科目に設定する企業が増えてきました。
なお、この科目の名称はインバスケット演習や面接演習のように決まった名称がついておらず、企業によっては、ビジョン策定演習とか戦略策定エクササイズとかさまざまな呼び方がされていますので、注意が必要です。
今回は、分析発表演習(あるいは方針立案演習)がどのような試験なのか、詳しく解説していきます。
分析発表演習・方針立案演習とは
まず、分析発表演習・方針立案演習とは何かですが、大まかに言えば、試験で定められた仮想企業の経営戦略あるいはあなたが責任者の役割を与えられた仮想の組織に関する実施計画を策定して多人数の前でプレゼン発表する試験です。
念のために繰り返しますが、対象となるのは今、あなたが所属している企業や組織ではありません。インバスケット演習と同様で、あなたにはこの演習における仮想の役割を与えられて演じることになります。
分析発表演習・方針立案演習の概要
分析発表演習・方針立案演習は、二つのパターンが有ります。一つは、インバスケット演習と同一の課題を用いて実施するケースとインバスケット演習とは別に課題が与えられるケースです。なお、この二つは課題の与えられ方が違うだけでやることや評価されるポイントは全く同じです。
分析発表演習・方針立案演習の流れ
それでは分析発表演習・方針立案演習はどのように行われるのかを紹介します。この演習は、分析・立案パートと発表パートの二つに分けることができます。それぞれのパートについて、見ていきましょう。
<分析・立案パート>
分析・立案パートでは、試験官から渡された資料を読み、資料から得られたデータや情報をもとに発表内容を考える時間です。なお、発表資料の作成もこの時間に含まれます。与えられる時間は、試験を実施する企業により異なりますが、多くが2~3時間ぐらいです。なお、上級職や企業によっては、このパートが3時間以上で設定されているケースもあります。
用意される資料ですが、架空の企業や組織に関して、あなたがこの演習で演じる役割やその役割に関係する情報やデータが書かれた資料が配られます。データや情報は、文章や表、グラフなどです。与えられる役割はさまざまで、成績が良くない営業所の所長や開発部門の課長などがあります。また、上位職の場合は、経営職のケースもありえます。
なお、どのような発表をするかは大まかに与えられており、たいていは組織の実施計画の策定もしくは経営戦略の立案です。まれですが、組織の問題点を探して、改善するというテーマが与えられるケースもあります。
さきほど、分析演習でインバスケット演習と連動しているかどうかで変わると述べましたが、インバスケット演習と連動している場合は、インバスケット演習で使った資料に加えて、追加資料が配付されます。
発表資料の作成は、模造紙へ手書きして作成するケースとパソコンで作成するケースの2パターンがあります。どちらで実施しているかは、過去の受験者からヒヤリングしておきましょう。
<発表パート>
発表パートでは、試験官と同じグループになった受験生の前で、分析・立案パートで作成した発表資料を基にプレゼンを行います。発表時間は、10~15分程度のことが多いです。
プレゼン時はあなたの与えられた役割に応じて、あなたはそれに合わせて発表しなければなりません。ちなみに発表を聞く聴衆は受験生と試験官ですが、聴衆という役割は与えられているものの、単に発表を聞くだけで特に何かすることはありません。(むしろ、邪魔してはいけません。)
なお、発表の順番は試験官によって決められているケースが多いです。
分析発表演習・方針立案演習で評価される点
分析発表演習・方針立案演習で評価されるポイントは次のとおりです。基本的に人材アセスメントで設定されている評価項目に従い、採点されます。
- 分析立案パート:情報分析力・問題発見力・判断力・実施計画性・創造力など
- 発表パート:ストレス耐性・コミュニケーション能力・リーダーシップなど
分析発表演習・方針立案演習で注意すべきこと
ここまでで分析発表演習・方針立案演習の概要を説明してきましたが、ようは発表資料を作成してプレゼンするだけなのですが、この演習特有の注意点がいくつかありますので、紹介いたします。
インバスケット試験と連動するかどうかを確認
さきほどから何度も述べていますが、分析発表演習・方針立案演習がインバスケット演習と連動するケースがあります。連動するかどうかで人材アセスメントの攻略の仕方が変わりますので、できれば過去の受験生から情報を入手しておきましょう。
攻略の違いですが、もしインバスケット演習と連動している場合であれば、インバスケット演習中から分析発表演習・方針立案演習の攻略が始めることができます。具体的には、インバスケット演習内で、次の点を探しながら臨みましょう。
- 組織が抱える課題はどんなものがあるか
- 分析発表演習・方針立案演習で使えるデータはどれか
- 分析発表演習・方針立案演習で策定する実施計画に使えそうな提案がないか
なお、インバスケット演習と連動していなければ、特に行うことはありません。
タイムスケジュールを確認
過去の受験者にタイムスケジュールがどのようなものだったか聞いておくべきことです。というのも、実は分析演習は実施する企業によって、タイムスケジュールが変わります。私が把握している限りでは、次の3つのパターンがあります。
- 分析・立案パートから発表パートまで連続で実施する場合
- 分析・立案パート中に夕食休憩が含まれている場合
- 分析・立案パートと発表パートが別日で設定されている場合
1のケースでは特に何かあるわけではありませんが、2のケースでは夕食休憩中であれば、発表資料の作成を行うことを認めている場合があります。つまり、分析・発表パートとして与えられた時間より余裕を持つことができます。また、発表資料の作成することが認められなくても、頭の中でプレゼン発表の練習をすることができますので、有効活用しましょう。
3のケースは、さすがに分析・立案パートの時間が終わったら、発表資料は回収されます。しかし、別日になるので、夜の自由時間中にプレゼン発表の原稿を考えたり、プレゼン発表の練習をしたりすることが可能です。
発表パートは規定以上の延長は認められない
プレゼン発表をしていると、どうしても話したいことが多くなり、プレゼン時間が延びてしまうことがあるかと思います。分析発表演習・方針立案演習では、30秒程度の超過は認めてくれますが、その延長時間を過ぎるとその時点で終了となります。途中立ったとしても、最後まで話させてもらえません。
時間管理のためには、時計で適宜確認するかタイマーを使うとよいでしょう。個人的にはタイマーを使い、一定時間が経過すると音が鳴るようにしておくほうがミスが防ぎやすいので、おすすめします。(終了2分前とかにセット。また、複数の時間をセットしておくこともアリです。)なお、タイマーの仕様は、試験官に確認を取ったうえで使いましょう。あらかじめ、バイブ機能付を使い、試験官の目につかないようにするのも一つの手です。
発表はビデオ撮影される
面接演習やグループ討議と同じく、分析発表演習・方針立案演習において、発表はビデオ撮影されます。ビデオ撮影の目的は、試験官が採点に用いるためと人材アセスメントが終了後に受験生に見せて反省会で用いるためです。
なお、ビデオ撮影されているからといって、カメラ目線にする必要はありません。むしろ、ビデオはないものと考えて、発表するときの目線は聴衆に向けるようにしましょう。
下書きも試験官は見る
分析・立案パートでは、自由に使用できる白紙の紙が配られます。試験を運営する企業の考え方や状況によっては、試験官が下書きを採点対象として確認する場合があります。
つまり、分析・立案パートで時間が不足して発表資料が中途半端になったとしても、こちらの白紙にどのような発表をするのかの骨格が書いてあれば、多少減点幅を少なくできる可能性があります。そのため、下書きと侮らずにある程度まとめておくことをおすすめします。
なお、上記のように書くと、下書きを清書しておこうと考える方がおられるかもしれません。しかし、下書きを清書する時間をとるぐらいなら、発表資料を充実させる時間に充てるべきです。最初から下書きは読める程度に書くようにするとよいでしょう。
まとめ
ここまで、分析発表演習・方針立案演習の試験概要及び評価基準、演習において注意すべき点について、解説してきました。
この演習は、実は管理職にとって必要な能力を最もバランスよく採点できる科目です。そのため、近年では本演習を重視している企業も現れていますので、上記をしっかり認識して準備していきましょう。