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インバスケット演習では何を評価される?高評価を得るために意識すべきポイントを紹介

インバスケット コツ

管理職の昇進試験で行われる人材アセスメントの中にインバスケット試験があります。このインバスケット試験は今までに経験した試験とは趣が大きく異なっていることから、多くの人が苦手としています。

 

しかし、インバスケット試験は受験生が管理職に求められる仕事に従事したときの能力を確認する試験なので、会社が管理職に求めている資質が何かを理解すれば、対策することは容易です。

 

この記事では、インバスケット試験がどのようなことを評価しているのかを紹介し、回答手順や高い評価を得られる回答の仕方を解説していきます。管理職の昇進試験を受験される方にはためになる記事なので、最後まで読んでいただければと思います。

インバスケット試験とは

インバスケット試験は、一言でいえば、指示が書かれた案件をたくさん与えられ、とある架空人物になりきって制限時間内で処理していくビジネス・ロールプレイングゲームです。

 

試験の名称に使われているインバスケットは、部長などの偉い人の前に置かれている未決済の箱から来ています。つまり、インバスケット試験で演じる「とある架空人物」は、部長や課長などの役職を持った人物であり、「指示が書かれた案件」は未決済の書類のことです。

 

このインバスケット試験は、多くの案件を短時間で的確に処理する能力や普段よりも上の役職になったときの行動基準が評価できることから、多くの企業にて管理職の昇進試験や部長職への昇格試験で実施されています。

 

インバスケット試験では何を評価するのか?

インバスケット試験は人材アセスメントの中で行われることが多く、その評価項目は受験生が所属している会社がどのような能力を重要視しているかにより決められます。人材アセスメントでは以下が評価されます。

  1. 情報把握能力
  2. 問題分析力
  3. 判断力
  4. 創造力
  5. マネージメントコントロール
  6. コミュニケーション能力
  7. 実行計画力
  8. 計画組織力
  9. バイタリティ
  10. リーダーシップ

それぞれがどのような観点で評価されるか、以下で説明してきます。

 

情報把握能力

インバスケット演習では、たくさんの案件を短時間で処理する試験なので、与えられる情報量も多いです。そのため、多くの情報の中から案件処理を行うのに必要な情報を収集し、正確に読み取り、活用する能力を評価されます。

 

問題分析力

問題分析力は、何が問題なのかを発見し、その問題を解決するために必要な情報を効率的に集めて解決に導く能力です。

 

先の情報把握能力は与えられた情報を受け身で処理する能力ですが、問題分析能力は自身が立てた仮説に従って能動的に情報を集める能力となります。

 

判断力

判断力は、案件を処理するにあたり、適切に判断してその判断を周囲に論理的に説明できる能力のことを言います。インバスケットでは、多くの案件を短時間で処理しなければならず、加えて情報も不足している部分もあることから、どうしても判断に迷うことも多いですが、高評価を狙うためにはてきぱきと判断していなければなりません。

 

なお、インバスケットでは部下や上司に判断を任せる指示を出すことができますが、あまりに任せきりにすると、判断力の評価は低くなります。

 

創造力

創造力は、慣例や相手からの提案に縛られず、自身で独創的なアイディアを考え出す能力です。インバスケットでは、後ほど解説しますが、複数の案件が関係していることもあり、その案件を組み合わせて処理することなどが評価されます。

 

マネージメントコントロール

マネージメントコントロールは、組織の方針や規則、決定事項に沿って、組織を動かす能力のことです。

 

もう少し具体的に説明すると、以下のような行動が評価されるポイントになります。インバスケット試験は、会社から何かしらの方針が与えられていますので、案件処理を行う際にその方針に沿って決断しなければなりません。また、部下の行動が方針や規則から外れていたりするときは、理由とともに行動を戒める必要があります。加えて、インバスケット試験で案件の処理のやり方を指示に関して、あなたが返ってきたタイミングで打ち合わせの設定して報告を求めるフォローも評価ポイントです。

 

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、相手に自身の考えを伝える能力です。また、インバスケットの中には部下からの提案や主張が含まれている案件がありますが、それらの提案を受け入れることも評価につながります。だだし、すべては部下の提案を受け入ればよいわけではないので、注意してください。

 

また、部下に対して、普段の仕事に対するねぎらいや成果への称賛、失敗した部下へのフォローの言葉なども評価対象です。また、部下への教育することや部下に意見を求めることも含まれます。

 

実行計画力

実行計画力は、与えられた案件をどのようにいつまで処理するかを計画に落とし込む能力のことを言います。インバスケット試験では多くの案件があるので、組織に与えられた経営資源だけでは一度には処理できないので、優先順位をつけて処理する必要がありますが、その優先順位付けも評価対象です。

 

計画組織力

計画組織力は、経営資源(人、モノ、カネ)を有効に活用し、組織を効率的に運営する能力です。限られた経営資源をどのように割り振り、成果を最大化できるかを見られます。インバスケット試験では、例えば、案件を処理するために適任者に役割を与えられたかが採点対象となります。

 

バイタリティ

バイタリティは、発生している問題に当事者意識をもって主体的に行動することです。与えられた案件を上司や部下を丸投げするなどしたら、評価が下がることになります。

 

リーダーシップ

リーダーシップは、組織に対してどのように行動するのかを方向性を示して、その方向に導いていく能力です。

 

バイタリティと似ていますが、あなたが影響を与える対象が異なっています。バイタリティはあなた自身が活動的に行動することを評価され、リーダーシップは組織に方向性を与え、行動するように促すことを求めています。

 

インバスケット試験の回答手順

ここまで、インバスケット試験の概要を解説してきました。では、インバスケット試験はどのように解答していけばいいのでしょうか?ここでは、回答のやり方を順番に紹介していきます。

 

全部の案件に目を通す

インバスケット試験で最初にやるべきことは全案件に目を通すことです。決して、大学試験のときのように1問ずつ、案件を読んでは回答していってはいけません。

 

これは、インバスケット試験において、相互に関連している案件があるために全案件を読んだのち、案件ごとの関係性を見極めたうえで回答する必要があるからです。そして、それぞれの案件をうまく利用して回答しなければ高評価を得ることができません。

 

加えて、時間が限られていることから全案件の処理ができないこともありえます。1問ずつ回答していった場合、もし最後の方に重要な案件があったら、回答できずに終了してしまう恐れがあります。そのような事態を避けるためにもまずはすべての案件を読んで、全体像を把握しましょう。

 

なお、案件を読む際に案件の要約や気を付ける点、他のどの案件と関連しているかをメモとして記載しておくと、次の優先順位付けや回答する際に楽になります。

 

優先順位付けする

全案件を読み終わったら、次に行うことは回答する順番を決めるために案件に優先順位を付けることです。これは普段の仕事でもどれから手を付けるかを考えたうえで取り掛かっていると思いますが、それと同じ行為です。

 

優先順位は重要度と緊急度で決める

優先順位は緊急度と重要度の二つの尺度で決めていくとよいでしょう。緊急度は案件内に書かれた指示の中にある締め切りや期限の順番で決めます。次に重要度の判断基準は、案件が抱えているリスクの大きさです。リスクの大きさは、損害金額やリスクを被る相手がだれなのか、といった観点から評価します。

 

重要度×緊急度のマトリックスを使うべし

優先順位を決める際は、緊急度と重要度を軸とした以下のマトリックスが便利です。これは、自身が判断した重要度と緊急度の度合いに従い、案件を識別する番号をマトリックス内に書き込むことにより、マトリックスを見れば優先順位がわかる優れものです。

インバスケット 優先順位 マトリックス

なお、このマトリックスは、次の4つに分けられます。

  • 第1象限 重要度:高×緊急度:高
  • 第2象限 重要度:高×緊急度:低
  • 第3象限 重要度:低×緊急度:高
  • 第4象限 重要度:低×緊急度:低

インバスケット演習では、最低限、この4つの象限の判断を外さないように訓練を重ねましょう。リスクの判断基準や納期設定に個人差があることから、同じ象限内で記した位置が多少違う程度は普通にあることなので、問題ありません。

 

優先順位付けは重要度を優先する

インバスケット演習では、緊急度よりも重要度を優先して順位付けを決めます。つまり、さきほどのマトリックスで作成した区分で優先順位を付けると、以下の順となります。

  1. 重要度:高×緊急度:高
  2. 重要度:高×緊急度:低
  3. 重要度:低×緊急度:高
  4. 重要度:低×緊急度:低

演習では、上記の順番で処理をしていきましょう。なお、同じ区分内で順位付けは余裕があればした方がいいですが、余裕がないのであれば上記の4つの区分で分ける程度で十分です。

 

ただし、インバスケット演習の中には、優先順位が高いもののトップ3を指定しなさいという指示があるケースがありますので、「重要度:高×緊急度:高」については、細かく順位付けする習慣をつけておいた方が良いです。

 

関連する案件をまとめる

実はインバスケット試験は律儀に案件ごとに回答する必要はなく、複数の案件をまとめて回答しても問題ありません。むしろ、関連している案件を見つけ出したことにより評価が高くなりますし、複数の案件をまとめることで回答を記入する時間を短縮することができます。

 

ただし、気を付けておくべきことは、試験を実施する運営会社が複数の案件をまとめて回答することを認めているかどうかです。試験前あるいは試験中に念のために確認しておきましょう。

 

回答を書く

ここまで下準備ができたら、用紙に回答を書いていきましょう。インバスケット試験は時間が不足しがちなので、すべての案件に回答することができない可能性があることから、必ず自身が判断した優先順位に従って回答してください

 

また、どうしても急ぐ気持ちはわかりますが、手書きの試験の場合、なるべく丁寧に、試験官が読める程度の字で書きましょう。

 

インバスケット試験で高評価を得るポイントは

それでは、どうやればインバスケット試験で高い評価を得ることができるのでしょうか。高い評価を得るためには当然、コツがありますので、以下でポイントを4つ上げました。

 

なるべく多くの案件に回答する

インバスケット試験を解説した本によっては、処理した数は評価とは無関係だと述べているものもありますが、案件を多く処理できたということはそれだけ評価ポイントを稼いでいることと同じ意味なので、できるだけたくさんの案件に回答しましょう。当たり前ですが、全部回答することが最も望ましいです。

 

インバスケット試験は2時間の試験で20~25件の案件を処理しなければなりません。一度、練習がてら問題集を解いた方は理解できると思いますが、全部の案件を処理することはかなり時間的に厳しいです。特に最初は勝手がわからないことから時間がかかります。ちなみに私は初めての練習では25件の案件で、15~17件くらいしか処理できませんでした。

 

しかし、問題集を繰り返し解くことで回答の仕方のコツを見つけることができますし、案件を読みときも大事なところがどこかわかるために読むスピードも上がりますので、処理速度は上げることができます。ひたすら訓練を積んでいきましょう。

 

ひとつの案件の回答に多くの指示や行動を詰め込む

インバスケット試験を回答する際に意識すべきことは、案件の中になるべく多くの指示や行動を詰め込むことです。というのも、回答の中に書かれる指示や行動は、インバスケットに評価されるポイントとなるからです。つまり、評価されるポイントを増やすことが、高い評価につながります。

 

ここでの評価される指示や行動は、主に次のものが挙げられます。

  • 判断(部下の提案の承認や否決、保留など)
  • アイディア出しや代替え案の提案
  • 情報収集の指示
  • 利害関係者への報連相
  • 事後報告の指示(メールの連絡や打ち合わせの設定など)
  • 権限移譲や部下への配慮(叱咤激励やねぎらい、教育的配慮など)
  • 他の案件との関連性を指摘
  • トラブルが起こった背景の調査依頼や再発予防の指示
  • その他の指示(部下に報連相の相手を増やすなど)

 

根本的な問題を解決する

インバスケット試験で与えられる案件の問題は、必ずしも目視できる表面的なものばかりではありません。すでに顕在化している問題をどう対処するかは、一般社員が行うことであり、会社が求めている管理職に求めている業務は、今後、起こりそうな問題をどう防止するか、あるいはまだ表面化していない問題をどう掘り起こし、解決するかです。つまり、高い評価を得るためには、隠された問題がないかを探すことを意識し、発生している問題を以後、繰り返さないように根本的な問題を解決できる指示を出しましょう

 

例えば、商品の納入時にトラブルが起こったという案件があるとします。その対処方法としては、納品トラブルがあった商品を交換するとか、相手に謝罪するなどが挙げられます。この対処方法は問題ありませんが、一般職員でも思いつくことです。管理職の立場としては、納品トラブルが起こりやすい根本的な問題が隠れている可能性がないか、なぜこの納品トラブルが起こったのかを問題提起し、同じような納品トラブルが繰り返さなくなるように対処する必要があります。これにより、以後の納品トラブルが減り、組織の効率化につながるので、試験では高い評価を得られます。

 

部下に仕事を任せすぎない

インバスケット試験の評価は、適切な役割分担をしたか、案件で起こった問題の処理方法を自らの考えで方向性を生み出したかが評価されるポイントです。そのため、評価項目のうち、判断力やバイタリティのところでも少し触れていますが、部下に判断や案件の対応を丸投げすることは、自身が適切と判断した案件のみにしましょう。

 

部下に判断を任せていい案件は、重要でない案件や部下から提案を採用する場合、部下の成長を促すために教育的配慮を促す場合です。なお、部下に判断を任せるといっても、部下からの提案を採用する場合や部下の成長を促すために教育的配慮を促す場合は、報連相の指示や方向性の指示は必要です。完全に任せっきりにできることがあるのは、重要でない案件のみでしょう。(それも案件の内容によっては、指示などが必要になることもあります。)

 

インバスケット演習で高評価の回答を書くコツとは

ここまでインバスケット演習を解くときに高評価を得るために心がけるべきポイントを紹介してきました。しかし、インバスケット演習では回答内容で採点されますので、上記を心掛けても回答内容が伴わなければ意味はありません。また、多くの人も心がけよりもどのような回答で評価が高いのかを知りたいと聞きたいと考えておられるのではないでしょうか。

 

この質問に対する返答は、一言でいえば、インバスケット演習で受験生が演じている役割に即した回答を行うことです。では、そうすれば、インバスケット演習で定められた役割を演じることができるかですが、以下のnoteの記事で回答の書き方のコツとしてまとめました。ここでコツは13個を示していますが、このコツを意識して回答を書くことで、減点を防いで得点を稼ぐことができますので、ぜひ参考にしてください。

note.com

まとめ

ここまで管理職などの昇進試験で実施されるインバスケット演習の概要や高評価を得る回答のコツに解説してきました。インバスケット演習は、自身が管理職に昇進したことを想定したロールプレイングゲームなので、現状の職務の延長線上ではなく、一段上の能力が評価されます。また、今までの大学受験などの試験とも形態が異なることから不安になる方もおられるかもしれません。

 

といっても、管理職になることを期待されて試験を受験される方々にとっては、本記事で述べたことを念頭にしっかり準備・対策をしておけば攻略できますので、頑張りましょう。