この記事にたどり着かれたということは、管理職の昇進・昇格試験の人材アセスメントを受験する予定だと思います。そして、その人材アセスメント試験の科目にグループディスカッション(グループ討議)が含まれているのだけれども、この科目で何を評価するのか、分からないのではないでしょうか?
今回の記事では、グループディスカッションでどのような行動が高評価につながるのか、何をしたら減点されるのかを解説していきます。なお、昇進試験をふまえて記事にしていますが、以下で解説することは就職活動のグループディスカッションにも適用可能です。最後までご覧ください。
なお、そもそも昇進試験のグループディスカッションがどのようなものかを知りたい方は先に以下の記事を見てもらえば、より理解がより深まります。
グループディスカッションがどのようなものなのかよりも、昇進試験で行われる人材アセスメント試験がどのようなものかを学びたい方は以下で詳しく解説しているので、まずはそちらを見てください。
グループディスカッションで評価される行動とは
では、昇進試験のグループディスカッションではどのような行動が評価されるのでしょうか。グループ討議で評価される行動としては、以下の5つが挙げられます。
- 課題の読み込みをきっちりする
- 聞く姿勢を意識する
- 討議の流れをコントロールする
- 議論を広げる
- 議論をまとめる
この5つは、少し抽象的なので、以下で具体的な行動を交えて解説してきます。
課題の読み込みをきっちりする
最初に挙げる評価される行動は、グループディスカッションの前の準備段階で渡される課題をきちんと読み込むことです。一見、この行動はだれでも普通にやっていることなので、なんで評価されるのだろうと思われた方も多いのではないでしょうか。もちろん、議論の前に課題を読まないとその後の討議に参加できないので、初めから昇進試験に合格する気がない人を除けば、真剣に読んでいるはずです。
ここで、課題をきっちり読み込むということは、読んだ形跡を紙などに整理して残しておくことを言います。具体的には以下の2つです。
- 討議前に行った原因分析や解決案のアイディア出しの過程を紙に残しておく
- 討議中に話し合うであろう論点を紙に残しておく
というのも、実は課題が書かれた紙や意見を考えるために用意された紙に書いた内容を試験官が確認し、採点しているためです。準備段階も気を抜いてはいけないということです。
ここで採点している能力は、以下です。
- 課題から的確に情報を読み取れたかの情報収集能力
- 与えられた資料から問題を見つけ出す課題発見能力
- 見つけた問題を分析する能力
- グループ討議でどのような方針で進めるのかを判断する能力
このあたりが得意分野と思う方は、得点の稼ぎ場です。逆に苦手と思う方は、資料から得られた情報のまとめ方やグループ討議の方針をどのように決めたのかを分かりやすく伝える方法を事前に考えておくとよいでしょう。特に方針決めに関しては、以下の記事でも書きましたが、グループ討議の肝となる「評価項目」を定めて採点表を作るとよいでしょう。
【参考記事】
聞く姿勢を意識する
二つ目に挙げるのは、聞く姿勢を意識することです。
まず、前提として、グループディスカッションは、集団で意見をまとめる場です。そのような場ではありますが、討議中に自分がどんな意見を言おうかとか相手への反論をどうすればいいのかとか考えないといけないことはたくさんあることは理解します。
しかし、集団で意見をまとめるということは、自分一人で意見を考えてまとめばよいというわけではありません。つまり、他人の意見を聞かず、自分の意見に没頭していうという状態は集団に参加しておらず、和を乱している存在ですので、ふさわしい行動ではありません。
では、他人の意見を聞いている状態というのはどのようなものなのでしょうか。グループ討議では、次のような行動が求められています。
- 他人が発言しているときは体を向けて、聞く
- 相手の発言に対して相づちを打つ
- 相手の発言をオウム返しする(要約してみる)
相づちは、ふんふんと首を振るだけでも大丈夫ですし、もっと聞いている姿勢をアピールするには、「なるほど」や「そうですね」といった言葉をタイミングよく発するといいでしょう。また、相手の発言を終わった後、どのような内容だったか要約してオウム返しするのもいいでしょう。オウム返しの例としては以下のようなものです。
(例)
「なるほど。〇〇ということをおっしゃっているのですね。」
※〇〇は相手の話のキーとなる内容
変化球ですが、以下のような他人を気遣う行動も評価されるポイントです。
- 発言していない人がいたら、発言の機会を促す
- 相手の心情を読み取り、落ち込んでいたりしたら慰める
まとめると、討議に参加している人が気持ちよく過ごせるような場になるように行動しましょうということです。
なお、ここで評価される能力は、以下でいわゆる対人能力です。
- 人の気持ちを感じ取れる(感受性がある)
- 他人の意見を受け入れることができる(柔軟性がある)
- コミュニケーション能力
討議の流れをコントロールする
三つ目に挙げる評価される行動は、討議をコントロールすることです。これは、リーダー役あるいはファシリテーター役を担った人が特に評価されるところになります。評価される行動の具体例を示すと、以下のものが挙げられえます。
- 議論の進め方を提示する
- 何について話すかを提案する
- 論点がずれてきたら、修正する
- 論点の転換をする
- 要点を整理する
ただし、優秀な人が集まっていること、他の人も昇進試験に受かりたいという思いが強いことから、昇進試験ではなかなかリーダー役はさせてもらえません。そのため、討議全体でリーダー役を担うのではなくて、ある一定の範囲でリーダー役をほかの人から任せてもらうようにしましょう。時間帯でもいいですし、役割でも構いません。
ちなみに私のおすすめは、自分の得意とする分野を活きる役割を討議するグループ内で分担するように仕向けることです。具体的に述べると、人の話を要約することが得意な人は他の人が発言した後、意見を要約してあげる役に、問題点を見つけるのが得意な人は問題点の指摘する役に、マネージメント能力が高い人は全体の流れを調整する役に、といった感じです。
この方法の隠れた利点は、一人とびぬけて優れた人がいてリーダー役を担ってくれるのであれば特に弊害がないのですが、リーダー役の争いが泥沼になると、グループ全体の評価が落ちることになるので、それをあらかじめ防ぎに行くことができます。(もちろん、そんな簡単にうまくいくとは限りませんが。)
この見出しの最後に、ここで示した行動で何が評価されるかについて、以下で示します。
- リーダーシップがある
- 管理能力(マネジメント力)
- 計画性がある
- コミュニケーション能力
議論を広げる
四つ目に挙げるのは、議論を広げることで、イメージはアイディアマンです。具体的な行動は以下です。
- ユニークなアイディアを出す
- 切り口を変えた意見を述べる
- 疑問がある点を質問する
- あえて批判的な意見を出してみる
この行動のポイントは、他の人が持っていない視点で物事を考えていることです。普段から他人と異なるユニークな意見を出すことが多い人は、ここで高い評価をもらうことができるでしょう。
これらの行動で評価されるのは以下のです
- 発想力
- 変革力(場を変える力)
です。
議論をまとめる
最後に挙げる評価される行動は、議論をまとめることです。このように書くと、最後の結論をまとめることと感じられるかと思いますが、何も結論だけでなく、以下のような行動も議論をまとめるものとして、評価されます。
- 回答案を絞り込むように議論を導く
- 回答を具体化する
一つ目に挙げた回答案を絞り込むように議論を導くというのは、言葉巧みに意見を誘導することとも読み取れますが、それだけでありません。もちろん、この行動はライバルばかりの昇進試験のグループディスカッションでできる人であれば、なかなかやれることではないので、高評価は間違いなしです。
しかし、普通の人にはできませんので、ここでのおすすめは、「評価方法」を提案することです。具体的には以下の事例にようにほかの人に向けて問いかけするのがやりやすいでしょう。
(例)
- こういう側面で考えると、どちらの意見がいいと思いますか?
- いくつかアイディアが出てきましたので、〇〇や××といった側面でアイディアを評価してみませんか?
二つ目の回答案を具体化するというのは他人が出してきたアイディアを要約してあげたり、分かりにくかった部分を補強してあげたりすることです。あるいは、単純に「Aさんの意見は、ここがわからないので、もう少し具体的に教えてほしい」と訴えかけることもよい行動です。
なお、ここで評価される能力があげられます。
- リーダーシップがある
- 管理能力(マネジメント力)
- 課題発見能力や課題分析力
評価されるその他
ここまでで出していないものでも、評価される行動はまだまだありますので、その中から、いくつかを箇条書きで載せておきます。
- 議論のきっかけを作る(先んじて発言する)
- 意見をたくさん出す
- 大きな声ではきはきと発言する
- 他の人から反論されても動じない
- タイムコントロールを行う(タイムキーパー)
グループディスカッションで避けるべきNG行動
ここまで、グループディスカッションで評価される行動の具体例を紹介してきましたので、ここでは逆に試験中で避けるべきNG行動について、解説していきます。まず、どのような行動がNGなのかですが、次の4つが挙げられます。
- 自分の意見ばかり主張する
- 発言しない
- 他人の発言を不用意にさえぎる
- 他人の発言を聞く姿勢を見せていない
どの行動も減点対象となりますので、グループ討議本番では行わないように気を付けましょう。
自分の意見ばかり主張する
最初に挙げるグループディスカッションのNG行動は、他人の意見に一切、耳を傾けずに自分の意見のみを主張することです。
勘違いしている人がいますが、グループディスカッションは、いかに他人を論破することができるかを見る試験ではありません。グループ討議は与えられた課題に対して、何が最適な結論なのかを集団で議論して導き出すことが目的なので、その目的に以下に即して行動できたかを見る試験です。
つまり、自分の意見を強硬に主張するだけでは、最適な結論を導き出すことを妨げているため、減点対象となります。グループ討議では、自分の意見を主張するだけでなく、他人の意見を聞き取るようにしましょう。
どうしても、自分の意見を通したいという方は、最適な結論を導き出す際の過程を自分の意見に有利になるように工夫しましょう。やり方としては、グループ討議の最後に結論として発表するために案を絞ることになりますが、その案を絞るときの評価方法を自分に有利になるように提案することがおすすめです。(評価項目を自分の意見に有利にする。)
発言しない
二つ目に紹介するNG行動は、あえて説明する必要はないかもしれませんが、発言しないことです。
グループディスカッションは、相手と言葉を交わして、一つの結論を出していく試験です。つまり、発言しないということは相手と言葉を交わしていないことになるので、試験官が評価することはできません。また、全員で協力して行う試験というにもかかわらず、何もしないということは試験に参加していない非協力的な存在なので、減点対象となります。
初対面の人の議論なので、発言しにくい気持ちなのも、不用意な発言で減点されることを恐れる気持ちも理解しますが、何かしら発言は必要です。思い切って行動しましょう。
もしどうしても難しいという場合は、以下を試してみてください
- 議論の中で分かりにくかった点を質問する
- 他人の意見につけ加えて意見する
- 他人の意見を評価する
- 議論を要約する
いずれも難しいと思う人はまずは「そうですね」とか「なるほど」と相づちを打つことから始めてみましょう。(もちろん、事前の対策でという意味です。本番で相づちのみでしかグループ討議に参加できないのであれば、さすがに不合格という結果以外はありえません。)
他人の発言を不必要にさえぎる
グループディスカッションのNG行動の三つ目は、他人の発言を不必要にさえぎることです。グループ討議では、どうしても自分の意見を聞いてほしくて仕方ないことはわかります。
しかし、他人が発言しているときに自分の意見を聞いてもらうために発言を遮ってはいけません。なぜなら、繰り返しになりますが、グループ討議は集団で意見をまとめる場なので、他人の意見を言わせない状態はあるべき姿ではないからです。もしこの行動をとれば、試験官は自分が目立つために集団の和を乱している存在とみなして減点されるでしょう。
ただ、普段の会議でもよくある光景ですが、討議で与えられた課題と関係のない話を延々とする人が参加している可能性があります。このような人に対しては、どうしても、意見をさえぎらないと、討議を円滑に進まなくなります。
この場合は話をどこかで遮らないと、討議がまとまらなくなる可能性がありますので、遮ることは問題になりません。他人が話しているところを遮るのはなかなか難しいですが、実はコツがあります。それは、相手の発言が途切れたタイミングで大きな声で「あの!ちょっといいですか?」とカットインするです。こうすることで、発言した人も含めて、周囲の目が自分に向きますので、そのあと、相手に発言を要約してオウム返しし、周囲の人に質問形式で返すと効果的です。
(例)
「Aさんが言いたいことは、〇〇でしょうか?この話は、討議の課題から離れているように思うのですが、皆さんはどう思われますか?」
他にも、カットインした後、相手の意見を要約するところまでは同じですが、そのあとに自分の意見を入れたあと、長々と話していた人以外に質問してみるのも一案です。
(例)
「Aさんが言いたいことは、〇〇でしょうか?この意見について、私は△△と思います。Bさんはどう思いますか?」
この辺りは普段の会話でもよくあることなので、傾聴に関する本の中でテクニックが書かれています。本の中でよく言われるのは、バラエティ番組のひな壇にいる人がどうやって人の話に割り込んでいるのかを参考にするアドバイスがよく書かれています。
傾聴に関する本は、以下のサイトでわたしのおすすめを紹介しているので、参考にしてください。
他人が発言を聞く姿勢を見せていない
最後に挙げるNG行動は、先の評価する行動のところでも少し説明しましたが、他人の意見を聞く姿勢を見せていないことです。具体例を挙げると、他人が発言してときに渡された資料を読んでいたり、考え事をするために目をつむったりするなどです。この場合、意見を出している人の話を聞かないということは、討議に参加していないこと同じですので、減点対象となります。
これを避けるためには討議中は、他人が話しているときはしっかり体を発言している人に向けて、相づちを打つようにしましょう。ときどき、「なるほど」とか「そうですね」など、声を入れるのも効果的です。
なお、「なるほど」といった声を出した相づちは、頻度が多いとそれはそれで議論の邪魔になりますので、ほどほどにしましょう。(少なくとも、自分がやられてうっとうしいと感じない程度には抑えましょう。)
グループディスカッションの行動で気を付けるべき点
ここまで、グループディスカッションで評価される行動と減点につながるNG行動に関して、具体的に解説してきました。皆さんは、個々の内容をもとにNG行動をなくし、評価される行動を多く盛り込んでいけば、高評価につながると考えられていませんか?
ある意味、その考えは正解のように感じられますが、実は高評価につながらないケースがあります。それは、次の二つのケースです。
- 評価につながる行動に一貫性がない
- 自分が持っている特徴以外でアピールしている
この二つのケースは、試験官から自分を偽っていることを見抜かれてしまい、逆に減点対象になります。では、それぞれがどのようなものなのか、解説していきましょう。
評価につながる行動に一貫性がない
まず、最初に挙げられるのが、評価につながる行動に一貫性がないです。これは高評価を得るための行動をたくさんやればやるほど、得点が稼げると思っている方がやりがちです。
これは人材アセスメント試験の特徴から説明できます。人材アセスメント試験では、受験者個人の得意な能力や不得意な能力を客観的に判定することが目的です。つまり、八方美人となるように手あたり次第、評価につながる行動を重ねてしまうことで、得意な能力は低く判定されてしまいます。一方で、不得意な能力は付け焼刃であることは、経験豊富な試験官(アセッサー)に見破られてしまい、得点が低いままになってしまい、結果として、得点が伸びません。
なので、グループ討議で高評価を得たいのであれば、手あたり次第に一貫性もなしに評価につながる行動をしていくのではなく、得意な分野と自身が判断している行動を表に出すように心がけるとよいでしょう。
自分が持っている特徴以外でアピールしている
どのようなケースなのか、一例を示すと、普段は、他人の話を聞き取るのが得意なのに、試験のときは目立つためにリーダー役を演じてみるということです。
俳優のように役に徹してなおかつ、演じたい役を全うできる能力があれば、減点になりません。しかし、慣れない役割を演じられる人はそこまで多くないでしょう。また、せっかく、自分の得意分野があるのに隠すことは得点が伸びにくくなります。
人材アセスメント試験の前に自身の得意分野が何かをしっかり見極めて、試験の突破のための武器を用意して試験に臨みましょう。
まとめ
ここまで、昇進試験で実施するグループディスカッション(グループ討議)でどのような行動が評価されるのか、どのような行動がNGなのかに関して、解説してきました。グループ討議の対策のために、ここで記載された内容をもとに日ごろから準備をしていきましょう。
ただし、記事内でも触れていますが、NG行動を減らし、評価される行動を増やすだけでは人材アセスメント試験を突破できるわけではありません。評価される行動を行ったとしても、一貫性のない行動を繰り返して自身の得意分野でない行動を増やすことは試験官によっては、減点されてしまいます。
このような事態にならないようにするため、自身の得意分野がどこなのかをしっかり把握して人材アセスメント試験の本番に臨むようにしましょう。